人物の魅力が伝わらない – TVドラマ『バカボンのパパよりバカなパパ』感想

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NHK総合で放送された土曜ドラマ『バカボンのパパよりバカなパパ』の感想です。漫画家、赤塚不二夫の半生と家族を描いた作品。原作は不二夫の娘、赤塚りえ子のエッセイ。

ほんとにこんな人?

なんか赤塚不二夫先生の描かれ方が良くなかった。短所ばかり目について魅力の部分が伝わってこない。

バカなんてなまっちょろいものじゃない。あれじゃ人格破綻者。本物の赤塚先生はこういうただ狂っただけの人だったのか?ドラマがそういう描き方をしただけで本物はあれほど酷くないと信じたい。

タイトルのように、バカボンのパパのほうが何倍もマトモな人格者に見える。

ドラマ内の先生ははっきり言って人間的に酷すぎる。憎しみが湧くレベルで嫌な人じゃん。可愛げがなくバカとは違うやばい人。浮気はしまくるし飲んだくれ。その上、他人の気持ちなんて全く気に掛けない。そういう描かれ方。

相手が嫁や娘であっても心を平気で踏みにじる。相手の事情を考えず自分の流儀を押し付ける。まるで悪役みたいだわ。自分は才能あるから何しても良いんだよ、みたいな傲慢さが感じられる。

娘さんがホントかわいそうに見えた。

浮気しまくった挙げ句はじめの嫁と離婚して娘とも別居。それなのに娘に会う時は父親面して凄い上から目線、頭ごなしに否定、高圧的に説教、しまいには体を売れに近いようなことまで言う。ちょっとひどすぎる。

でも、対立しながらもそんな父が好きだという娘…。この娘がドラマ原作エッセイの作者なんだよな。

ちょっと分かんないわ。どこに好きになる要素があるのかドラマを見ただけでは分からない。欠点ばかりで魅力をちゃんと描いてないんだよ。

まわりの聖人たち

この娘もそうだけど、ドラマ内の赤塚先生の突き抜けたクズっぷりに比べ周囲の人間が聖人ばっかり。まずお目にかかれないレベルのド聖人だわ。どんなに自分勝手なことをしても許してくれて支えてくれる。愛してくれる。

まるで出来の悪いなろう系ハーレム小説みたいだ。流石にコレは不自然。都合が良すぎる。周りの人が赤塚先生に対して甘い理由に納得がいかない。

赤塚不二夫がなぜ愛されていたかという部分、人間的魅力がドラマ内で上手に描けていないのがいけないと思った。

NHKの公式ページには「社会では典型的なダメな父親・赤塚不二夫が、何故、多くの人に愛され、慕われたのか。彼の考える「家族」の在り方を描き、笑えて・笑えて・泣けるドラマをお届けします。」と、書かれているけど「何故」の部分がちっとも分からなかったよ。ただのダメな父親にしか見えないよ。

自己中の嫌な奴が理由もなく愛されたようにしか見えずひたすら不条理。ちょろっと「実は家族思いなんだよ、強気なようで人のいないところでは泣いてるんだよ」っていう描写は入るけど弱い。取って付けたような感じで説得力が無く、全然魅力的には見えない。

そのせいで金持ちで有名人だから周りが大目に見ている、というふうにも取れてしまう。皮肉なことに「才能と金さえあれば何をしても許される」という人間愛とは対極のメッセージを伝えかねないよコレは。

人格がぶれている

1話の前半と最終回だけ文句なしのいい人みたいに描かれてるのも謎。なにこれ?他の回と人格違いすぎてないか。同じ人に見えない。どう描くかはっきりしといてほしい。

1話前半を見て破天荒だけど優しくて素敵な人だなーと心が暖かくなったのに、その後のクズっぷりでアレ?アレ?と困惑した。急に人の気持ち分からないマンになってんだもん。サイコパス的発言繰り返すし。あの優しさはどこ行った?騙された感が凄かった。

最終回もまあ、不快エピソードが無かったのは良かったけれども、無理やり美談にしてお涙頂戴で終わらせた感じで嫌だ。安直な感動シーンだったよね。そうは言っても実際安易な感動ものを喜ぶ人多いもんなぁ。恋人が死ぬ系のテンプレ映画がヒットするくらいだし。

最終回で晩年の赤塚先生が急に真面目になって語り出すのも変だったな。バカをやめたのか?世界一のバカを目指すんじゃなかったのか?今までのアレは何だったんだよ。

1話前半&最終回の聖人っぷりと他の回のバカさクズ加減との温度差がでかすぎだろやっぱり。

なんでシリアス?

いい話みたいに終わらせないでよ。クズっぷりを描くのならもっとふざけたシュールな展開、シュールな終わり方のほうが良かったぜ。全体的に中途半端、いい話にしようとして失敗したドラマだと思う。(なおツイッター等での評判は良い模様。世間的には成功。)

クズさを笑い飛ばすような作風だったらいいのにシリアスに持っていく所にセンスを感じない。人間的魅力を十分描かずにシリアスをやるからただの自分勝手で嫌な奴みたいになってしまう。笑いがないから真顔になって、なんて酷い人なんだと思ってしまう。

ただただ赤塚先生のイメージが悪くなるドラマでした。魅力が十分に伝わって来ず、悪い部分ばかり目に付いてしまいます。

そのせいで逆に本当の赤塚先生がどんな人物だったのか気になりました。実際に多くの人から慕われていたようなので魅力的だったのは間違いありません。本などを読んで実像を知りたいです。

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