『クローン・ウォーズ』シーズン7(ファイナルシーズン)の感想

スター・ウォーズのスピンオフCGアニメ『クローン・ウォーズ』シーズン7(ファイナルシーズン)を見た。

今のところディズニープラスの配信限定らしい。『マンダロリアン』シーズン2を見に入ったので視聴。

『クローン・ウォーズ』は、ルーカスフィルムがディズニーに買収された際打ち切りになったシリーズ。復活したのは嬉しいけど、これで最後(ファイナル)だと言われると寂しい感じ。12話しかないし。

買収によって打ち切りにならなければ、もっと多くの話数を作る予定だったらしい。お蔵入りになったエピソードの一部は小説等に流用されたとか。

どうせなら全部作ればよかったのに、なんで12話だけなんでしょう。D社的にはルーカスの息の掛かったシリーズは消し去って、ネズミ色のスター・ウォーズを作りたいのかな?

シークエルの完成度は言わずもがな、出来の良かった『マンダロリアン』もシーズン2終盤は怪しい感じだったし、これからのスター・ウォーズには不安しかないんだよなぁ……。

スピンオフを中心に映像作品を大量に作るらしいけどあまり期待できない。ルーカスさんに監修してもらったほうがいいと思うけど、今のD社は絶対にやらないでしょうね。

エピソードごとの感想

『クローン・ウォーズ』シーズン7は全12話で、4話ごとにひとかたまりのエピソードになっている。3つの物語がある構成。

以下各エピソードの感想を書く。

1~4話

バット・バッチ(不良分隊)のエピソード。バッド・バッチは特に個性的なクローンたちからなるエリート部隊。

バッド・バッチのクローンたちはキャラが立っていて好きになったが、話の内容としてはいつも通りの『クローン・ウォーズ』という感じ。新鮮味はなかった。

敵陣に潜入して情報を探ったり、囚われた味方を救出したりという内容。

このエピソードは打ち切り前に途中まで作られており、ファイナル・シーズンのために完成させたらしい。見慣れた感じの内容なのはそのせいかもしれない。

レックスの人間らしい部分、私情に流されてしまう所が見られたのはよかった。シリーズを通して描かれてきたことだが、クローンは戦闘マシーンではなく感情のある人間。一見弱点にも見える感情的な部分こそが彼らの結束と強さの源でもある。

5~8話

ジェダイを辞めたアソーカのその後の話。コルサントの下層で出会った姉妹との交流と冒険を描くエピソード。

これは新しさがあった。こういう一般人の視点で描かれる話は今までのシリーズにはなかったと思う。特に人間ドラマがよかった。非情に丁寧に描かれていた。

妹は厳しい状況でも夢を持って前向きに生きている。自分も余裕があるわけではないのに困っている人に手を差し伸べる姿には美しいものを感じた。

住む階層による価値観の違いも描かれていた。上の世界のジェダイと違い、下層階の人たちは生きるためには綺麗事を言っていられない状況にいる。

困っている人には手を差し伸べる妹と違い、姉のほうは善悪や良心に囚われていては生き抜けないと考えている。

はじめは金にがめつい嫌なやつみたいな雰囲気を漂わせており、アソーカと対立する。だけど、だんだん悪党ではないことが分かってくる。親を失い、妹と生きていくのに必死で余裕がなかっただけ。

違う立場で生きてきた人との交流することで、上の世界しか知らなかったアソーカにも変化があったし、アソーカの正義感や生き方を見た姉妹も生きる指針みたいなものを取り戻した。なんだかいい話だった。

また、フォースの使えない一般人の姉妹と一緒に冒険させることで、ジェダイであるアソーカの驚異的な身体能力を見せていたのも面白かった。一般人ではまず跳べないようなすごい距離をジャンプしたり。

それとやっぱりジェダイの腐敗っぷり酷いなと思った。姉妹の両親を事故で殺してしまったジェダイが大した謝罪もせず、「これはフォースの導きだ」と言うだけで帰ったという話。

アマプラのドラマ『ザ・ボーイズ』を彷彿とさせた。ジェダイも腐敗したヒーローみたいなものだったのね。

アソーカを冤罪で追放しておきながら、無実だと分かると急に掌返しして「これは試練だった」なんて都合のいい事を言う評議会の姿勢とも重なる。

本当にジェダイが目指すべきは、あの妹みたいに自分が困っているときでも誰かを助けようとする存在だと思うんだよな。

兵士や警官のようになってしまったジェダイとは一体。ジェダイは滅びるべくして滅びたのか…。

EP3『シスの復讐』でも評議会の腐敗には触れられていたけど、『クローン・ウォーズ』シリーズではそれを補完する形でさんざん腐敗っぷりが描かれたね。

9~12話

『シスの復讐』を別の視点(アソーカ)から追体験できるエピソード。すごくよかった。最終章らしい内容。モールも出る。

クローン・トルーパーという存在の哀しみが描かれる所も『クローン・ウォーズ』の締めとしてふさわしい。

レックスは自分たちは戦うために生まれてきたと言った。しかし実際には共和国を守るための兵士ではなく、パルパティーン(シディアス)の陰謀のコマして生み出されただけだったということを知ることになる。

クローン戦争そのものが自作自演の意味のない戦いで、そこで多くの兄弟が命を散らした。必死で戦ってきたのにみんな無駄死にだった。

生き残ったレックスの気持ちを考えるといたたまれない。クローンたちって一体……。

ずっと一緒に戦ってきた戦友のジェダイとの信頼関係も、脳内のチップによって簡単に破壊されてしまう。

アソーカに忠誠を誓いヘルメットに特別なペイントをしたクローンたちが、オーダー66が発令後は容赦なく彼女を殺そうとする。

とても皮肉。クローントルーパーという存在の哀しみを映像で見せつけられる。本当は心の自由がない。

チップを摘出したレックスとともにオーダー66から逃れようとするアソーカ。仲間だったクローンたちを殺さないように戦うけど、船が墜落して彼らは死んでしまう。

すべてが無意味な戦いだった。

墜落した船の残骸と、埋葬されたクローンたち。

クローン戦争の虚しさが感じられる。共和国も分離主義者も敗北。勝ったのはシディアスと帝国。

悲劇としか言えない終わり方だった。

『シスの復讐』の映画では、オビ=ワンとヨーダがアナキンの子供の存在を知っていた。だから、まだ希望はあるという終わり方になったけど、それを知らないアソーカとレックスにとっては絶望しかない。

視聴者が『シスの復讐』やオリジナル三部作を見ているのが前提だから作れたラストだと思う。これ単体で見ると、あまりにも救いがなさすぎる。

おわりに

悲しいけどいい最終回だったと思う。

ただ『クローン・ウォーズ』はこれで最後と言わず、もっと作ってほしかったな。この時代のエピソードをもっと見たい。バット・バッチのスピンオフで描かれるのかな?

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