※ネタバレ注意(タクシードライバーのネタバレも少々あります)
映画『ジョーカー』に影響を与えたと言われる作品を見てみたかったので、先日は『タクシードライバー』(1976)を、今回は『キング・オブ・コメディ』(1982)を鑑賞しました。
どちらも監督はマーティン・スコセッシで、主演はロバート・デ・ニーロ。
スコセッシ監督は巨匠と呼ばれるほどの人物なので名前は知っていたけど、作品を見るのはこれで二作目。
余談ですがこの前「マーベル作品は映画ではない」と発言して物議を醸してましたね。
『ジョーカー』との比較
『キング・オブ・コメディ』は『タクシードライバー』に比べて、『ジョーカー』との共通点が多く、より大きな影響を与えていると感じました。
主人公はコメディアンを目指す30代男ルパート・パプキン。彼はジェリーというコメディアンに憧れています。
そのジェリーが出演しているTV番組が『ジェリー・ラングフォード・ショー』。
これが『ジョーカー』の『マレー・フランクリン・ショー』にそっくり。主人公と有名コメディアンの関係性を含め、明らかにオマージュしている。
さらに主人公は現実と妄想の区別がつかないちょっとヤバい人。観客が見ている映像が事実なのか、主人公の妄想なのか分からない所も似ています。
さらに本人は才能があってすごく面白いジョークを言えると思いこんでるけど、他人から見るとつまらない、ウケない。
思い込みが強く、自分を客観視できていない感じ。根拠のない自信が痛々しい。
ただし重くて深刻な話ではなく、『タクシードライバー』と同じように割と気楽に見られます。そこは『ジョーカー』との大きな違いかな。
主人公の行動は傍から見るとおかしいのだけど、本人は至極真面目に夢に向かって突き進んでいる。ちょっと滑稽でクスッと笑えるのと同時に切なさもある映画でした。
『タクシードライバー』と似たラスト
オチは『タクシードライバー』に似ています。
主人公が凶行に及ぶけど、なんだかんだでハッピーエンドになるという。
狂った犯罪者として刑務所に入れられて終わると思いきや、有名人になり、本がたくさん売れ、服役中に芸を磨いて出所後は本物のコメディアンになってしまうという大どんでん返し。
ただこれも『タクシードライバー』のラストと同じく、事実じゃないのかもしれません。主人公の妄想なのかもと思わされますねぇ、あまりにもうまく行きすぎで。そんなに都合よく事が運ぶか?
別の解釈
ラストシーンは別の見方もできます。成功するためには根拠のない自信や、自分が優れているという病的な思い込み、大胆な行動力が必要というメッセージなのかもしれません。
自信がなく「自分なんて…」と思ってるような人じゃ何かに挑戦しようとは思わないから、成功しようがない。
主人公パプキンは自分を客観視できず、誇大妄想狂のようにしか見えない男だけど、彼のアグレッシブさや行動力はすごい。
冷たくあしらわれてもへこたれないし、普通の人は恥ずかしくてできないようなことまで平気でやってしまう。
案外そういう人がチャンスを掴んで成功を収めるような気もします。
犯罪を犯してでも夢を叶えてやろうというぐらいの気概があれば、大抵のことはできそう。(あくまでも気概の話です。犯罪は駄目ですよ。)
天才と狂気は紙一重と言いますし、現実の成功者にもおかしな人は結構いると思います。
おわりに
序盤は主人公の奇行を痛々しいなぁ思いながら眺めているだけでしたが、厳しい現実を突きつけられた主人公が正攻法では駄目だと気づき、凶行に及ぶところはなかなか興奮しました。
どんな凶行なのかネタバレしないので、興味のある方は是非見てみてください。
最近のマーベル映画と違い長くないので見やすいですよ。最初から最後まで見ても2時間かかりません。