映画『明日に向って撃て!』感想:意外と湿っぽくないニューシネマ

映画『明日に向って撃て!』を見た。この作品は1969年公開のアメリカ映画で、ジャンルで言うと西部劇になるようだ。アメリカン・ニューシネマの代表作の一つとされている。

監督:ジョージ・ロイ・ヒル。
出演:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス

舞台は1890年代のアメリカ西部。強盗を生業とするブッチ・キャシディとサンダンス・キッドという二人の男が主人公。映画の原題は二人の名前そのもので、Butch Cassidy and the Sundance Kid 

二人はいかにも西部劇という感じの服装をしていて、ひと目見ればそういう時代の話なんだなと分かる。帽子をかぶって馬に乗り、銃を撃ち合う。

ある時二人は列車を襲って金を奪うのだけど、それがきっかけで鉄道会社に目をつけられ、刺客を差し向けられる。刺客はかなりの強敵でどこまで逃げても追いかけてくる。アメリカにいては命がないと考えた二人は南米ボリビアへ逃亡。

逃亡先でも強盗を働く二人は警察や軍に追われる身となり、追い詰められ、悲劇的な最期を迎える。

意外と明るいテイスト

アメリカン・ニューシネマといえば、若者が挫折したり、体制に圧殺されてバッドエンドという印象が強い。この映画はその代表作と言われているし、あらすじを読むと重くて悲しい話に思える。だけど、実際見てみると暗く感じなかった。

演出のおかげだと思う。シリアスな状況でもジョークやユーモアがあり、まるでコメディのような笑えるシーンが挟まれるから楽な気分で見られる。

『イージー・ライダー』のような不条理感はないし、『俺たちに明日はない』を見終えた時のようなしんみりした気持ちにはならなかった。バッドエンドだけどなんか明るい。

強盗しかできない二人

ブッチとサンダンスは明らかに犯罪者なんだけど、悪人という雰囲気はなく嫌いになれない。とても魅力的な人たちで感情移入して見てしまう。外見がかっこいいだけじゃなくて、それぞれの性格がだんだん分かってきて好きになる。

ただとても業の深い人達。逃亡先の南米でもやっぱり強盗をするという。

ゴールドラッシュで栄えていると期待していたボリビアは、実際に行ってみると貧しい国だった。カタギに戻って真面目に働くかと思いきや、やっぱり強盗をする。

覚えたてのスペイン語を使って銀行員を脅迫するシーンはユーモアが入っていて良かった。カンペを見ながら強盗するというコメディ。

散々ボリビアを荒らし回るのだけど、流石にやばい思ったのか足を洗って真面目に働くことを決意。鉱山関係の用心棒をするが、現金輸送中に雇い主が山賊に殺されてしまう。応戦して山賊を全滅させ金を奪い返し、その流れで強盗生活に戻っていく。

そういう生き方しかできない人たちだったんだなあ。不器用な人。足を洗って農夫にならないかと言われた時も自分の性に合わないと拒否したし。

人間味があり、とても魅力的な人たちだけど、まともな世界では生きられない。

自業自得という言い方は好きじゃないけど、散々好き勝手にやってきた以上、悲劇的な最期を迎えるのは仕方ないように思える。必然であり、決して不条理ではない。

だからこそ、そこまで可哀想だとは思わないし、変に悲しくならないっていうのもあると思う。

最後まで社会に迎合せず自分の流儀に従って生きたということで、見方によってはハッピーエンドなのかもしれない。もちろん生き延びたかったとは思うけども。

そのほか

映像も良かった。風景が美しいね。アメリカの荒野からボリビアの森まですごくいい感じ。光が美しい。映像の明るさがこの映画を明るい雰囲気にしている気もする。

自転車を捨て馬に乗って旅立つシーンが印象的。自転車は未来の乗り物として描かれている。新発明で実演販売のシーンもあった。

その自転車を捨て、馬という旧時代の乗り物に乗るというのは、時代についていけない、古い男だと暗示しているのでしょうね。

アメリカの歴史は詳しく知らないのだけど、多分もう開拓時代は終わりかけていて、二人のような荒くれ者の居場所が無くなりつつあるということなのだろう。

名作と言われるだけあって、見終えたときの満足感は大きい。いいもの見た感。なんとも言えない趣がある。すばらしい。暗いニューシネマは苦手だという人にもおすすめできる作品。

あらすじだけ読むと悲しい話なのに、全然しめっぽくないんだよなあ。カラッとしていて清々しささえ感じる。

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