前の記事では『最後のジェダイ』のよかった点ばかり書きました。でも冷静になって振り返ってみると結構アラも目立つ映画だったなあと。
終盤が素晴らしかったので途中までの不満が吹き飛んでしまったのですが、全体的な完成度はそこまで高くない感じです。この記事では『最後のジェダイ』の不満点をそこそこ辛辣に書いていきます。
少々ネタバレがありますのでご注意を。(他エピソードのネタバレも含む)
敵が全然怖くない
この映画というかEP7からですが、敵が全然怖くないです。ファースト・オーダーには威圧感のようなものが一切ありません。マヌケな集団にしか見えませんよ。
悪役は怖くてなんぼです。ルーカスの『スター・ウォーズ』にはダース・シディアス(皇帝パルパティーン)という、とにかく邪悪で狡猾で恐ろしい敵がいました。
アナキンをダークサイドに落とし、陰謀によってジェダイを殺戮。後にルークがダークサイドに寝返らないと見るや電撃で殺そうとする冷酷非道なやつですけど、悪役としては最高のキャラクターでした。
長い年月をかけじわじわと共和国を乗っ取る様子には鳥肌が立ちました。権力を握るため自作自演の戦争まで起こすのですから並の悪役ではないです。
また、言うまでもないですがダース・ベイダーも名悪役ですね。その他にもターキン総督やドゥークー伯爵、グリーヴァス将軍などかつてのSWには魅力的な敵が沢山いました。
対してEP8には残念ながら魅力的な敵がいません。
スノークが弱そう(弱い)
最高指導者だか何だか知りませんが、スノークは弱そうでカリスマ性が感じられません。外見も魔法使いの映画に出る “例のアイツ” みたいですし……。まず覇気がないんですよ、枯れた印象を受けます。シディアスはもっとギラギラしていたぞ!
そのうえ、情緒不安定で中二病のカイロ・レンくんごときにあっさり殺害される始末。見た目だけじゃなくて、ほんとに弱いじゃん! 心を読めるんじゃなかったのかよ! 刃物の取り扱いには十分注意しましょう。
まあ確かにシディアスもEP6であっけなくやられましたけど、あれは選ばれし者アナキン(ベイダー)の、息子を助けたいという強い思いがあったからですよ。レンくんだったら反応炉へ投げ落とす前にビリビリで死んでると思います。
小物ハックス
ハックス将軍は映画の冒頭からバカにされてましたよね。ポーに通信で「ハグス」呼ばわりされイライラ。器が小さい!
そもそもこいつ、若いのになんで将軍になれたのか謎なんだよなぁ。おそらくスノークに見出されたからなんでしょうけど、そのスノークにさえ「小物」呼ばわりされています。小物だから扱いやすいんだって……。
スノークが殺害されたので今から自分が最高指導者だと調子に乗っていたのに、レンくんにフォースで締め上げられ即屈服する情けなさ。
小物のフリをしているだけで、実はハックスこそがシスの暗黒卿、スノークの方が彼の操り人形という設定だったら面白いんですけどね。
銀バケツ
一番無能で何のために存在したのか分からないのが、銀バケツことキャプテンファズマ。
長身で銀ピカのカッコイイ外見からは想像できない無能さ加減! フィンを「裏切り者」呼ばわりして処刑しようとしましたが、一番の裏切り者は自分だろうと。
コイツがいなかったらEP7でスターキラー基地破壊されてませんからね。我が身可愛さにシールドを解除し、味方に甚大な被害をもたらした大馬鹿者です。なんでのうのうとキャプテンを続けられてるんでしょうね。
レジスタンスのスパイじゃないかと疑うレベル。今作でも見せ場はなく、フィンとローズの処刑に失敗したあと、フィンとの戦いに破れて転落するだけの役回り。せっかくいいデザインしてるのに、もう少し活躍させてあげられなかったんですかね……。
情けなくサルラックに落ちて退場した、ボバ・フェットのオマージュか何かなの?
ファースト・オーダーの行く末
スノークの死亡により、情けない若造二人(レン&ハックス)に導かれることになったファースト・オーダー。部下たちは付いてきてくれるのでしょうか? 愛想をつかした部下に反乱を起こされないか心配です。
そもそもこのファースト・オーダーという組織には不可解な点が多い。やたらと強大な軍事力・経済力を持っていますがどうやって手に入れたのでしょう。
未知領域を開拓したと言いますが、弱体化していた帝国残党がたった30年でここまで盛り返すという設定には無理矢理感があります。
特にEP7のスターキラー基地のようなトンデモ要塞(星を丸ごと基地化、移動可能、デス・スターを遥かに凌ぐレーザー砲)を作れるのはおかしい。
また、ファースト・オーダー設立の中心になったという元帝国軍将校はどこに行ったのか。彼らはメインキャラクターとして登場せず、正体不明なエイリアンのおっさんと頼りない若者二人が組織を率いているんですよね。
年齢的にも経歴的にも元帝国軍将校が上の位にいておかしくないはずなのに謎です。帝国瓦解から30年ほどしか経っていないのだから全員が引退しているとは思えないですし……。彼らはスノークたちに始末されたという設定なんですかね?
スケールが小さい
EP8は物語のスケールが小さく地味に感じました。
要約するとファースト・オーダーという強くて悪い組織が弱小レジスタンスの残党狩りをする話。敵が逃げていく宇宙船を追いかけて攻撃する場面が延々と続きます。
間にレイとルークの話やフィンがカジノ惑星へ行く話が挟まりますが、そちらも特に広がりがなく映画前半は盛り上がりに欠けます。
物語の終着点が分からない
どうすれば主人公たちレジスタンスの勝利となるのでしょうか。なんのために戦っているか分かりにくい。ラスボスだと思われていたスノークがあっさり倒されたことでますます戦う目的が不明瞭になりました。
「ファースト・オーダーから銀河を開放する」ことかもしれませんが、銀河に彼らの支配がどの程度及んでいるのか分からんのですよね。とりあえずEP7で新共和国の中心惑星は破壊しましたけど。
ファーストオーダーが、これから銀河支配を進めるのを防ぐのがレジスタンスの狙いなのでしょうか。
次回作はどうするんでしょう。カイロ・レンを倒したところで「それが何?」という感じですし、物語の終わらせ方が見えてきません。ファースト・オーダー軍を一人残らずやっつけるのが勝利条件だとしても絵的に地味だし分かりにくいですよね。
もしEP9に「第2スターキラー」が出てきたらズッコケますよ。確かに分かりやすい破壊目標にはなりますが……。
EP9は監督がEP7『ジェダイの覚醒』のJ・J・エイブラムスになったので、ちょっとありそうで不安。EP7のような焼き直し映画はいらないので、個人的には別の監督に作ってもらいたかったです。
主人公たちに魅力がない
レイ、フィン、ポーという新主人公たちですが、なんというか地味なんですよね。オーラがないというかカリスマがないというか……。
確かにレイは修行も受けていないのにフォースを使いこなせてメチャクチャ強いですけど、説得力がないです。普通の人に「強い」という設定を無理矢理くっつけた感じで、キャラクターとしてのリアリティがありません。
生身の人間という感じがせず、ストーリー上の必要性から生み出された作り物感があります。フィクションだからこそキャラクターは人間らしくすべきだと思うのですけどね。
フィンは逆に徹頭徹尾普通の人なので不自然さはないですが、華もないです。敵を裏切って味方になったという点を除けば脇役感満載。もっと見せ場を作ってあげてほしい。
ポーはパイロットのスキルが高すぎて違和感を覚えるレベルですね。神がかった操縦テクニックなので、彼もフォースを使っているんじゃないかと疑ってしまいます。
それとポーは残りの二人以上にバックグラウンドが明かされていないので、感情移入ができません。ただ操縦が上手い人でしかなく、それ以上の掘り下げがないのは残念。
主要キャラの設定不在
主要キャラに深い設定が与えられていないように感じます。キャラクターに魅力がないのはそのせいかもしれません。
スノークも結局何者かわからないまま退場させられました。ファンはいろんな考察、妄想をしていたのに回答を与えられず肩透かし状態ですよ。
スノークに関してはダース・プレイガス説、シディアス憑依説、メイス・ウィンドゥ説など色々あったんですけどね。
レイも結局スカイウォーカーや過去の作品に登場したジェダイの子孫ではありませんでした。飲んだくれ親に売られた娘という設定。習ったわけでもないのにフォース使いこなし、ライトセーバーを上手に扱える理由は謎のまま。
一部のファンの間では、ライトセーバーの使い方がシディアスに似ていたので関係があるのではと言われていましたがそういう訳でもなかったと。これ、EP7時点では裏設定があったのに監督が変わった結果バッサリ捨てられた可能性ありますよね。
監督インタビューで、ルーカス・フィルムから「こう作れ」というような指示はなく自由に作れたというようなことを言ってますけど、設定くらい前作と統一しておいてほしかったですよ。シリーズものなんだから。
おわりに
個人的に、この映画で楽しめたのはルークの活躍する終盤だけでした。レイ達はいま一つ活躍できないまま、ルークと名もなき少年に良い所を持って行かれます。
それにしてもルーカスの『スター・ウォーズ』って、やっぱり次元の違う面白さだったんだなあと強く感じます。色んな意味で神がかっていました。
一部の古参ファンから評判の悪いEP1やEP2でさえ今作の何倍も面白いです。物語の宇宙にグイグイ引き込まれます。他の映画とは世界観というか空気感が違います。あのセンスは誰にも真似出来ない。
下手に似せようとしてEP7のような焼き直し(劣化コピー)になるくらいなら、好きにオリジナル作品を作ったほうがマシ。その点ではライアン・ジョンソン監督でよかったと思います。
よく考えてみると今作の悪かった点の多くはEP7から引き継いだもの。前作からライアン・ジョンソン監督が作っていたらもっと別な『スター・ウォーズ』になっていて、そちらのほうが面白かったのかもしれません。
↓『最後のジェダイ』終盤のよかった点をまとめた記事です