SWスピンオフドラマ『マンダロリアン』は文句なしの傑作【感想と妄想】

『スター・ウォーズ』(SW)シリーズ初の実写ドラマ『マンダロリアン』をようやく鑑賞。

前から気にはなっていたのだけど、シークエル(EP7,8,9)とディズニーの製作体制に不満があったので、しばらくはルーカスの関わっていないSWは見ないようにしようと心に決めていた。

けれどEP9『スカイウォーカーの夜明け』公開から数ヶ月が経過しだんだん怒りが薄れてきた。『マンダロリアン』の良い評判も聞こえてきた。EP9を散々ディスっていた評論家たちも絶賛している。

意地を張っていても仕方ないので「ディズニーデラックス」に登録。無料期間中に見終えればディズニーに課金することにもならないと自分に言い聞かせ見てみることにした。

あらすじ

時代はEP6『ジェダイの帰還』の5年後、帝国崩壊後の混乱期。

ヘルメットで顔を隠した賞金稼ぎ、通称マンドーが依頼を受け謎の赤ちゃん「ザ・チャイルド」を救出(ジェダイ・マスター、ヨーダに似ているのでファンからはベビーヨーダと呼ばれる)。そのことがきっかけで様々な事件に巻き込まれていく話。

西部劇オマージュがふんだんに盛り込まれているらしいが、元ネタの西部劇をほとんど見たことがないのでどの辺りがオマージュなのかよく分からない。

感想

やっとみた『マンダロリアン』だが、ディズニー買収以降のSW実写作品の中で一番面白いと思った。シークエルより断然いいねこれは。『ローグ・ワン』や『ハン・ソロ』もよかったけど、これはもっといい。

製作の中心はジョン・ファヴロー。『クローン・ウォーズ』や『反乱者たち』のデイヴ・フィローニも参加している。

完全な憶測だけど『マンダロリアン』の出来が良かったのは、上層部の分かってないやつらが口出ししなかったからかもしれない。

好き嫌いですぐスタッフをクビにするキャスリーン・ケネディやディズニー上層部も、マーベル映画で実績のあるジョン・ファヴローを無下に扱うことはできなかったんでしょうね。(根拠なし。ただの妄想です。)

とにかく、上の連中は資金のことだけ気にしていればいい。口出しは無用。クリエイティブな部分は現場に一任しないと面白い作品はできないぞと言いたい。

 

以下、とりとめもなく思ったことを書いていきます。ちょっとネタバレがあるので注意。

SW宇宙

やっぱり宇宙の広がりを感じられるのがいい。『マンダロリアン』には色々な星や、様々な種族が出てきて、それぞれ独自の風習とか生活が見られるのが楽しい。これがSWの楽しさ。

シークエルに登場する星は地球っぽいのが多くてあんまりワクワクしなかった。

それに人間に関しては色々な人種が出てきたシークエルだけど、エイリアンは少なく存在感が薄かったし、その星独自の生物もあまり出てこなかった。かろうじて印象に残ってるのはポーグくらい。

他作品とのつながり

本作はこれまでに作られたSW作品の要素を上手に取り入れている。世界観のつながりを自然に感じさせてくれるし、他作品へのリスペクトが感じられてすごくいい。センスを感じる。

オリジナル三部作はもちろん、プリクエルやスピンオフの要素も入っている。

マンドーの乗るレイザー・クレストは帝国成立以前、要するにプリクエルで描かれた時代に作られた船という設定。外見はクローン兵の乗るガンシップを彷彿とさせる。

『ローグ・ワン』からはデス・トルーパーが登場。その他にもファンにとって嬉しい引用がたくさん。

引用などのファンサービスは多いけれど、それだけに終止することはなく、新しいことにも挑戦しているし、SWをこの作品から見る人でも十分楽しめるようなストーリーが用意されている。素晴らしい。

シークエル(特にEP7と9)は本筋にファンサービスを入れすぎたせいで焼き直しのような内容になっていて微妙だった。

音楽

音楽はいつものSWと趣が違う。クラシックなオーケストラではなく、より土俗的なイメージの曲。笛とか太鼓とか民族楽器みたいなものも使われているのかな?ぴーひょろひょろ、ドンドコドンドコ。雰囲気があっていい。

マンドー

主人公、通称マンドーは初登場時、非情な賞金稼ぎのように見えた。でも話が進むとだんだん物静かで心優しい男だということが分かってくる。

結構人間味があって情けない所も見せてくれるのがいい。

『チャプター6:囚人』は面白いけど心が痛くなる内容だった。賞金稼ぎたちと組んで脱獄の手伝いをする回。

マンドー以外の賞金稼ぎは荒くれ者ばっかでいわば本物のDQN。

マンドーが蔑まれ笑いものにされたり酷な扱いを受けるのは見ていて心が痛む。まるで学校とかで、大人しいやつがウェーイ系やDQNに絡まれ虐められてるのを見てるみたいだった。

おお、マンドー……、他人事とは思えん。

DQNが自分の家(船)に入ってきて、勝手に中を物色されるのは嫌だわ。他人の家の冷蔵庫を勝手に開けて中身を見るやつがいたのを思い出す。

あっち(アメリカ)の学校でもこういうのはよくあるんだろうなぁ。ジョックがナードを虐げる構図。

でもマンドーは彼らを皆殺しにしたりはしないのな…、見捨てて一人で帰るだけ。そこに作り手の良識を感じた。(容赦なくミンチにしたほうがスカッとするけどね。)

マンドーがキレてDQNどもをバンバン撃ち殺していく展開だと、銃乱射事件を想起させるからアカンのかも。このドラマは子供も見るだろうしな。銃社会アメリカでは洒落にならない。

過去

マンドーの過去が次第に明らかになり、マンダロリアンの教えを支えに孤独に生きてきたことが分かる。

回想シーン、マンドーの子供時代、分離主義勢力のドロイド軍に故郷が襲われている。両親はマンドーを穴の中に隠した。

子供が穴の中に隠れ、蓋を締めて敵をやり過ごすシーンは『ローグ・ワン』にもあった。これもオマージュ的なものなのかもしれない。『ローグ・ワン』のジンはソウ・ゲレラによって助け出された。

一方、マンドーを助け出し育てたのはマンダロリアンの一派「デス・ウォッチ」だったらしい。鎧のマークから判断できる。

こいつら『クローン・ウォーズ』では暴力大好きなやばいテロリスト集団として描かれてたけど、子供を助けたりしてたのか…意外。村を焼き払ったり、ドロイド(バトル・ドロイドではない)相手に射的をやって喜ぶ野蛮な奴らだったぞ。(参照:『クローン・ウォーズ』 シーズン4 第14話)

彼らと比べると今回登場したマンダロリアンたちはより善良な感じ。ちょっと修行僧みたいな感じだった。派閥が違うのかな?デス・ウォッチの人たちは普通に人前でヘルメット外してたし、違う教義を持ってそう。

脇役たち

主人公マンドーもさることながら脇役たちも個性的で魅力がある。

アグノートのじっちゃん(クイール)、なんで死んじゃうのん…。ほんとに悲しかった。やっと自由になれたのに。平穏な余生を送ってほしかったのにな。最後まで帝国に翻弄されるとは。

彼はほんとうにかっこよかった。熟練の技術者としての風格があると同時に精神的な高みにもいる印象。老師感がある。そこらのジェダイよりも悟ってる感じ。

帝国の奴隷として苦労してきたんだろうけど、捻くれたりせず、無欲で、本当の強さを持っていると思った。

おばちゃん

『チャプター5:ガンファイター』で登場したモス・アイズリー宇宙港のおばちゃん(ペリ・モットー)も好き。

生活感がある。その場所でずっと暮らしてきたんだなって納得できるキャラクターなんだよな。その宇宙で本当に生きているというリアリティを感じさせてくれる。

こういうキャラ作り、雰囲気作りはルーカスの精神を受け継いでると思う。ルーカスは初代SWでボロボロの汚れた宇宙船を出したり、ロボット(ドロイド)が中古で売買される場面を見せたりした。ピカピカの宇宙船や新品ロボットが当たり前だった当時、それはとても画期的で見た者に衝撃を与えたらしい。

チャプター5の監督・脚本はデイヴ・フィローニ。『クローン・ウォーズ』の時にも思ったけど、彼はルーカスの思い描いた宇宙をほんとうによく理解していると思う。

ショックトルーパー

傭兵のキャラ・デューンも姉御肌のいいキャラだったけど、若干設定が分かりにくかった。

ショックトルーパーっていうから帝国側から寝返ったのかなと思ったけど違った。反乱軍、新共和国軍にもショックトルーパーがいたらしい。紛らわしいな。

ショックトルーパーと言われたら鎧に赤いマーキングをしたアイツらしか思い浮かばないよ。

ジャワとタスケン

ジャワ族はタトゥイーンにしかいないと思っていたけど他の星にも住んでいることが判明。意外。

マンドーがザ・チャイルドを探しに行った星(クイールが住んでいた星)はアーヴァラ7というらしい。ジャワがいるから一瞬タトゥイーンかと思ったけど別の星だった。

タトゥイーンから移住したのかな?そもそも故郷が別にあるのか?気になる。

 

チャプター5では本当のタトゥイーンが舞台に。マンドーは砂漠で出会ったタスケン・レイダーと交渉していたけど、話が通じるのが意外だよ。意思疎通できない野蛮人だと思ってた。

EP2『クローンの攻撃』やEP4『新たなる希望』のタスケンって問答無用で突然襲ってくるやべぇやつだったじゃん。今回のタスケンは2人はお行儀が良すぎる。野蛮な部族は狩りつくされて大人しいやつだけ残ってるのか?何か設定があるのかもしれない。知りたい。

ベビーヨーダの謎

ザ・チャイルド(ベビーヨーダ)はとても愛らしい。

シーズン1にはジェダイが出なかったけど、この子がいるからフォースを使うシーンが見られた。実写スピンオフは一般人の戦いがメインでフォースが少なかったから嬉しい。

ベビーヨーダは赤ちゃんなのに相当フォースが強い。ヨーダと同種族だからだろうか。また、ヨーダの種族名はずっと不明だったけど、この赤ちゃんがきっかけで詳細が明らかになるかもと話題になっていた。

みんな色々考察しているみたいだけど、帝国残党がベビーヨーダを狙っている理由が気になる。

捕まえて何をしたいんでしょうね。洗脳して利用するつもりなのかね。『クローン・ウォーズ』には、シディアスがフォース感応者の赤ん坊を誘拐して洗脳しようとする話があった(シーズン2 第3話)。

ただ、ベビーヨーダが死んでいても「額は下がるが報酬を出す」というところが引っかかる。「必要な物質を抽出して始末するんだ」とも言っていた。洗脳目的だとすると死んでたら意味ないよな。ただドクターは「約束が違う」と反発していたから、本来は生きたまま活用したいのだろうけど。

 

別の予想をするなら、パルパティーンを復活させるために使うとかか?フォースをチューっと吸って復活?ベビーヨーダはフォースが強そうだから使えそう。

とはいえ帝国の残党はパルパティーンが生きてることを知っていたのだろうか?

シークエルでファーストオーダーの人間さえ知らなかったことを考えるとシス・エターナル(エクセゴルにいたカルト集団)以外には秘密にしてたっぽい。(メタなことを言うと映画の製作陣さえ知らなかったと思う。後付けだよね生存は。)

やっぱりベビーヨーダの件にパルパティーンは関係ないのかな。ただ、EP7『フォースの覚醒』の時代までに生存情報を知っていた者が全員戦闘で死ぬとか、口封じで始末されたとかで、闇に葬られたという可能性もあるからなんとも言えない。

おわりに

言い訳になるけど、自分は正史のSW作品全てに目を通しているわけではないので知識は怪しいです。にわかです。

未邦訳の小説まで読んでる本物のファンはとても偉いと思う。

小説やコミックに手を出す前に、とりあえず映像作品は全部見ておこうと思う。『クローン・ウォーズ』は見たので次は『反乱者たち』と『レジスタンス』かな。「ディズニーデラックス」で配信されているから見やすい。

ちなみに2020年4月現在、日本国内で利用できるディズニー系配信サービスは「ディズニーデラックス」のみだけど、年内には本家「ディズニー・プラス」も開始予定とのこと。

配信のタイムラグがなくなるなら嬉しい。『マンダロリアン』は米国より1ヶ月くらい遅れての配信だったし、『クローン・ウォーズ』のファイナルシーズンは日本でまだ配信されていない。

喜ばしいことに『マンダロリアン』はシーズン3まで製作が決まっているみたい。シーズン1あっという間に見終えてしまったから続きが待ち遠しいですよ。

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