『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(EP9)の公開から一ヶ月が経過。
公開当初は賛否両論が出て盛り上がりましたが、そろそろ議論も落ち着いてきている頃だと思います。
そこへ『スター・ウォーズ』関連の大きなニュースが相次いで伝えられました。
コリン・トレヴォロウ版EP9のリークと、オビ=ワンスピンオフドラマの脚本家更迭です。
筆者はかなりのショックを受け、現在のルーカスフィルムとディズニーの上層部に対する不信感が高まりました。文句を書かせてもらいます。
※以下、EP9を含む『スター・ウォーズ』シリーズのネタバレがあります。観ていない方はご注意ください。
幻のEP9
一つ目のニュース。コリン・トレヴォロウ監督版EP9の脚本とコンセプトアートがリークされました。
劇場公開されたEP9『スカイウォーカーの夜明け』の監督はJ・J・エイブラムスですが、当初はコリン・トレヴォロウが監督をする予定でした。
しかしトレヴォロウは「創造上の違い」から解任されてしまいます。
リークされた脚本は当初、ファンによる創作ではないかと疑われていましたが、後に本物だと判明。
「スター・ウォーズ」コリン・トレヴォロウ、幻のエピソード9『Duel of the Fate』のリークは本物だと認める
なお、リークされた脚本は日本語でも読めます。おそらく日本のファンの方によって翻訳されたものでしょう。リンクを貼らせてもらいます。
スターウォーズエピソード9コリン・トレヴォロウ版のあらすじ暴露
コリン・トレボロウ案の『スター・ウォーズ エピソード9』ストーリーの詳細が判明
印象
トレヴォロウ版のほうがストーリーに新しさがあるし、イマジネーションに富んでいて『スカイウォーカーの夜明け』より面白そうです。
しっかりEP8『最後のジェダイ』の続編になっていて、テーマやメッセージを受け継いでいます。もちろんパルパティーンを復活させなくても話を完結させられている。
さらに、現代的なテーマも入っていました。
経済的な格差、極一部の富裕層による富の独占。
荒廃したコルサントでは多くの市民がスカベンジャーとして生活し、ジェダイテンプルは貧しい人々の住処になっている。
レジスタンスの呼びかけによって、抑圧されていた市民や寝返ったトルーパーが立ち上がりファーストオーダーに戦いを挑む。
古臭いテーマの焼き直しではない、今だからこそやる意味のある内容だと思います。
コンセプトアートを観るだけでもワクワクします。この内容で映画を作ってほしかった。
またクビ
次のニュース。オビ=ワン・ケノービが主人公のスピンオフドラマの製作が延期されたようです。
『スター・ウォーズ』オビ=ワン単独ドラマ、無期限製作保留に ─ ルーカスフィルムが脚本家を更迭、夏にも製作再開目指す
ルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディ社長が脚本に満足せず、脚本家をクビにした模様。
またかという感じですね。ケネディ社長は今まで何度も脚本にダメ出しをしてスタッフをクビにしましたが、一体何回同じことを繰り返せば気が済むのか。
- ローグ・ワン:別監督が全編の半分を撮り直し
- ハン・ソロ: 監督交代
- EP9:監督交代
- オビ=ワン:脚本家更迭 ←NEW
うーん、これは酷い。他の作品で高い評価を受けている若手監督が多かったのに、何故クビにする?
社長の判断は正しかったのか?
ケネディ社長の判断力とセンスには疑問を持たざるを得ません。交代前の監督が作ったほうが面白いものが出来たんじゃないかという疑惑はこれまでもありました。
ただ、これまでは前の監督がどのような作品を作ろうとしていたのか明かされていなかったので判断しようがなかった。もしかすると滅茶苦茶で見るに耐えない内容だったのかもしれないので。
しかし、今回のトレヴォロウ版リークを見るに、やっぱりケネディ社長には見る目が無かったのだなぁと思わざるを得ません。
ただし次の記事によれば、監督の方にも多少問題はあったようです。でも脚本の良し悪しはそれと別問題。
『スター・ウォーズ』監督降板劇、恐ろしの内情 ─ トレボロウとルーカスフィルムの「自分主義」限界の瞬間
百歩譲ってEP9の監督を変えるのはやむを得ないとしても、脚本はトレヴォロウ版をベースにすべきだったと思います。
なぜ新鮮かつエキサイティングなシナリオを却下して、パルパティーン復活などという懐古的で強引なシナリオにOKを出したのか理解できない。センスが無いのでしょうか?
個人的には『スカイウォーカーの夜明け』も嫌いではないですが、脚本は非常にお粗末だと言わざるを得ません。
宝探しに過去作のオマージュシーンを付け足しただけの薄っぺらい脚本。目新しさが無いうえ、誰も成長せず、深いテーマやメッセージ性もありません。
EP8『最後のジェダイ』を無かったことにしたいという思いだけは伝わってきましたが……。
映像面で十分楽しませてもらったので許せましたが、お話は素人の二次創作レベル。
謎の判断基準
ケネディ社長は脚本にケチを付けられる立場でありながら『最後のジェダイ』で、レイアの生身宇宙遊泳やハイパースペース特攻を容認しました。そこが理解できない。
そんなことをやったら『スター・ウォーズ』の世界観がおかしくなるでしょ。そういう所に口出しして世界観を守るのが、ルーカスの後を継いだ社長の本来の役目だと思うのですが。
新しいことに挑戦するのは歓迎しますが方向性がおかしい。前の作品との連続性が破壊されてしまう。もはや別の宇宙ですよ。
しかも、ハイパースペース特攻のような世界観を破壊するシナリオはOKなのに、これまでの世界観から逸脱しないトレヴォロウ版脚本はNGという判断基準が謎なんですよね。
何が気に入らなかったんでしょうかね?もしやこの人もオリジナル3部作原理主義者?プリクエル(EP1~3)が嫌いでコルサントを出したくないから却下した?
無いとは思いますが、そんな理由だったら許せないですね。
ちなみにJ・J・エイブラムスもあまりプリクエルが好きじゃない気がします。プリクエルのオマージュが少ないので。
個人的にはEP9でパルパティーンが空に電撃を放つ時「無限のパワー」って言わせてほしかったですよ。今回は本当に無限のパワーだったし。
グダグダの新『スター・ウォーズ』
結局シークエル(EP7~9)は、各エピソードの整合性が取れていないグダグダな出来になってしまいました。大枠を決めず、行き当たりばったりで作らせたケネディ社長の責任は大きいと思います。
ちゃんとマスタープランを考えていれば、唐突にパルパティーンを復活させ速攻で葬るような超展開にはならなかったでしょう。
シークエルも終わりちょうどいいタイミングなので、そろそろ退任すべきではないでしょうか。
気に入らない監督をクビにできるような強い権力を与えられているのですから、それ相応の責任は取るべきです。
この社長が居座る限り、パッとしない『スター・ウォーズ』しか観られないのではないか。そういった不安が今回のリークで強まりました。
新しいこと、独創的なことに挑戦しようとするとケネディ社長が横槍を入れてきて、それに反発するとクビにされる。外からはそういうふうに見えます。
内部事情の全てが分かるわけではないので、全部が全部社長の責任とは言い切れませんがね。
いずれにせよ、同じ人物が長期間トップに居座るのは百害あって一利無しです。シークエルが終わり一区切りつきましたし、そろそろ新しい風を入れるべき。
若手に社長の座を譲ってほしいですよ。